なんだか狭く感じる?空間心理で叶える心地よい広がり。手軽な色と配置で「視線の抜け」を作る工夫
家族構成の変化とともに、お部屋の見え方も変わる頃
お子様が独立され、ご夫婦お二人での生活が中心になったり、お孫さんが遊びに来る機会が増えたりと、50代後半はご自宅の使い方が変化しやすい時期かもしれません。
それに伴って、以前は感じなかった「なんだか部屋が狭く感じる」「物が増えて圧迫感がある気がする」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大規模な模様替えやリフォームは大変そうだし、専門的なことはよく分からない...そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、ご安心ください。実は、ほんの少しの「配置」や「色」の工夫で、部屋の感じ方はぐっと変わります。そして、その変化は、私たちの心の状態にも心地よい影響を与えてくれるのです。
今回は、空間心理の考え方を取り入れて、「視線の抜け」を作ることで部屋に広がりを感じさせ、心も軽やかにする方法をご紹介します。手軽に始められることばかりですので、ぜひ試してみてください。
空間心理で大切にしたい「視線の抜け」とは?
空間心理では、私たちの心が部屋の広さや雰囲気、配置に影響を受けると考えます。中でも「視線の抜け」は、部屋を心地よく広く感じさせるために大切な要素の一つです。
「視線の抜け」とは、部屋に入った時や中にいる時に、視線が遮られることなく、部屋の奥の方や窓の外へと自然に通る感覚のことです。
例えば、目の前に大きな物がドーンと置いてあると、そこで視線が止まってしまい、部屋が狭く感じられたり、圧迫感を覚えたりすることがあります。逆に、視線がスッと奥まで通ると、実際よりも部屋が広く感じられ、心が開放的でリラックスできる効果が期待できるのです。
この「視線の抜け」は、大がかりなリフォームをしなくても、家具の配置や色使いを少し変えるだけで、手軽に作ることができます。
手軽な配置の工夫で「視線の抜け」を作るアイデア
まずは、家具の配置を少し見直してみましょう。
- 背の高い家具は部屋の奥に: 部屋の入口から見て、手前に背の高い家具があると視線を遮ってしまいます。本棚や収納棚など、高さのある家具はできるだけ部屋の奥の方に配置すると、入口からの視線が通りやすくなります。
- 視線の通り道を作る: 部屋の中に、無理のない範囲で通路を確保しましょう。特に、よく通る場所や、窓に向かう道筋に物が多いと、視線だけでなく体の動きも妨げられ、窮屈に感じがちです。物を整理したり、家具の向きを少し変えたりして、スムーズな視線の通り道を作ってみてください。
- 窓に向かって視線が抜ける配置: 窓は外の景色が見え、自然光が入る場所です。窓に向かって視線が抜けるような家具配置を意識すると、奥行きが感じられ、開放感が増します。リビングなら、ソファを窓の方に向ける、ダイニングテーブルを窓の近くに置くなどが考えられます。ただし、逆光がきつすぎないように調整は必要です。
- 特定の場所での応用例:
- リビング: 部屋の入口から見て、ソファの後ろに背の高い観葉植物などを置くのは避け、奥が見えるように配置します。テレビ台なども、あまり奥行きのないものを選ぶと圧迫感が減ります。
- 寝室: ベッド周りをすっきりとさせ、視線が遮られるものを減らしましょう。窓の外が見える配置であれば、朝の目覚めも心地よくなるかもしれません。
- 玄関: 玄関は家の顔です。入ってすぐの場所に視線を遮る大きな物があると、圧迫感を与えます。靴箱の上に置く飾り棚なども、背の低いものを選び、奥の壁が見えるようにすると、玄関が広く感じられます。
手軽な色の工夫で「視線の抜け」を強調するアイデア
配置と合わせて、色の使い方も「視線の抜け」を効果的に演出してくれます。
- 奥の壁の色を工夫する: 部屋の奥にある壁の色を、手前の壁よりも少し淡い色や、青や緑などの寒色系にすると、奥の壁が実際よりも遠くにあるように感じられ、奥行き感が生まれます。すべての壁を塗り替えるのは大変ですが、一面だけアクセントウォールとして色を変えるだけでも効果があります。難しい場合は、奥の壁に飾る絵やタペストリーの色を淡いものにするだけでも違います。
- 明るいトーンで統一感を: 部屋全体のトーンを明るい色でまとめると、光が反射しやすく、部屋が広く明るく感じられます。白やアイボリー、ベージュ、パステルカラーなどを基調にするのがおすすめです。
- 手前と奥で色の濃淡をつける: 部屋の手前にある物(ラグの手前部分、手前の家具など)に少し濃いめの色を使い、奥に行くほど淡い色や明るい色を配置すると、遠近感が強調され、視線が奥に誘導されやすくなります。例えば、ソファの手前に置くクッションの色を濃くし、奥の壁の色や飾りの色を淡くするといった工夫です。
- 床を見せる工夫: 床が見える面積が広いほど、部屋は広く感じられます。大きなラグを敷き詰めるのではなく、一回り小さなラグに変えて床面を多く見せる、脚付きの家具を選んで床が見えるスペースを作るなどが効果的です。床の色も明るい方が広く感じられます。
その他の手軽な「視線の抜け」を作る工夫
配置や色の他にも、手軽にできる工夫があります。
- 鏡を効果的に使う: 鏡は、部屋の広がりを視覚的に演出するのに非常に効果的です。窓の向かいに鏡を飾ると、外の景色が映り込み、視線がその先に抜けていくように感じられます。ただし、どこに何を映すかによって心理的な影響が変わるため、心地よく感じる場所に置くことが大切です。
- 照明で奥行きを出す: 部屋の奥の壁や、フォーカルポイントとなる場所を照明で照らすと、そこに視線が誘導され、奥行き感が生まれます。フロアランプやスタンドライトをコーナーに置いたり、絵を照らしたりするのも良い方法です。
- 整理整頓を心がける: 物が少ないほど、視線は遮られずにスムーズに通ります。不要な物を減らし、使う物は定位置にしまうことで、物理的にも視覚的にもすっきりとした空間になります。これは、心の整理にもつながります。お孫さんが遊びに来る機会が多い場合は、すぐに片付けられる工夫も合わせて考えると良いでしょう。
小さな変化で、部屋も心も心地よく
ご紹介した「視線の抜け」を作るための工夫は、どれも今日からすぐにでも始められる、比較的手軽なものばかりです。
家具の向きを少し変えてみる、クッションの色を明るいものに変えてみる、窓辺をすっきりさせてみるなど、小さな一歩から試してみてください。
部屋に広がりが感じられるようになると、心にもゆとりが生まれます。圧迫感が減り、リラックスして過ごせる時間が増えるかもしれません。心地よい空間は、ご夫婦お二人の穏やかな時間や、お孫さんと過ごす楽しいひとときを、より豊かなものにしてくれるでしょう。
ぜひ、ご自宅で「視線の抜け」を意識した空間づくりにチャレンジして、心と部屋の心地よい変化を感じてみてください。