空間心理で家をもっと心地よく。ニッチや棚に作る「自分だけの小さな安らぎ空間」
家の中の「小さな場所」が、毎日の心をそっと支えてくれる
お子様が独立されたり、ご夫婦二人の時間が増えたりと、暮らしの形が変化する中で、ご自宅の空間を見直したいとお考えになることがあるかもしれません。大規模なリフォームや模様替えは大変そうだと感じていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、家全体を変えなくても、ほんの小さなスペースを心地よく整えるだけで、心に穏やかさや前向きな変化をもたらすことができます。特に、ふとした瞬間に目に留まる「ニッチ」や「棚の一角」のような小さな空間は、工夫次第で「自分だけの安らぎの場所」になる可能性を秘めています。
この記事では、空間心理の考え方を少し取り入れて、家の中の小さな空間を心地よくするための手軽なヒントをご紹介します。特別な知識は不要です。色や小物の配置を少し変えるだけで、毎日の心がきっと軽やかに変わるのを感じていただけるはずです。
空間心理とは？ なぜ小さな空間が大切なのでしょう
空間心理とは、私たちのいる場所の「配置」や「色」、あるいは「光」や「素材」といった要素が、無意識のうちに心や行動に影響を与えているという考え方です。例えば、明るい色の部屋にいると気分が弾みやすかったり、落ち着いた色の場所にいるとリラックスできたりといった経験は、多くの方におありかと思います。
家の中には、リビングや寝室のような大きな空間だけでなく、玄関のニッチ、廊下の壁にある小さな棚、キッチンのカウンターの一角、本棚の空いているスペースなど、様々な「小さな空間」があります。これらの場所は、私たちが日々の暮らしの中で何気なく視線を向けたり、通り過ぎたりする場所です。
だからこそ、これらの小さな空間を意識的に心地よく整えることは、日常の中でふと「ホッとする瞬間」を生み出すことにつながります。大きな空間を変えるよりもずっと手軽で、すぐに効果を実感しやすいのです。
ニッチや棚に作る「自分だけの安らぎ空間」手軽なアイデア集
それでは、具体的な小さな空間ごとに、空間心理に基づいた色や配置のアイデアを見ていきましょう。どれもすぐに試せる簡単な工夫ばかりです。
1. 玄関のニッチや小さな棚：外と内を切り替えるポジティブ空間に
玄関は、家に入る前と出た後で必ず通る場所。ここに心地よい空間があると、外出時の気分を上げたり、帰宅時の心を穏やかに切り替えたりする助けになります。
- 色の工夫: 玄関に明るい色を取り入れると、ポジティブな気持ちになりやすいと言われます。ニッチの壁紙を淡い黄色やクリーム色に変えたり、小さな置き物の色を明るいもの（白、パステルカラー）にしたりするのがおすすめです。
- 配置の工夫: 季節を感じさせる小さな飾り（例：春なら桜の造花、秋なら紅葉の葉のオブジェ）や、お気に入りの香りのアロマスプレーなどを置くと、視覚や嗅覚から気分を切り替えるスイッチになります。出かける際に必ず見る場所に、心が明るくなるものを配置してみましょう。
2. リビングの棚の一角：視覚的な癒やしでリラックス効果を
リビングはご夫婦で過ごすことが多い場所かもしれません。その中でも、ご自身がよく座る場所から見える棚の一角などを活用してみましょう。
- 色の工夫: リラックス効果を高めるには、緑やベージュ、淡い青などの自然を感じさせる色が適しています。その一角に置く本の表紙カバーの色を揃えたり、小さな布を敷く色を工夫したりすると良いでしょう。
- 配置の工夫: 小さな観葉植物や、眺めていると心が落ち着く写真、お気に入りのカップなどを配置します。これらのアイテムは、見るたびに心が安らぎ、「自分にとって心地よいもの」があるという安心感を与えてくれます。夫婦共有のスペースでも、ご自身の「ホッとする」アイテムをそっと置いてみてください。
3. キッチンのカウンターやパントリーの棚：家事の合間の気分転換に
キッチンでの家事は、時には単調に感じられるかもしれません。そんな時、ふと視線を向けた場所に心地よい空間があると、気分転換になります。
- 色の工夫: 清潔感のある白に加え、淡いオレンジや黄色など、少し明るくポジティブな気持ちになれる色を小物で取り入れてみましょう。ただし、刺激が強すぎない穏やかなトーンを選ぶのがポイントです。
- 配置の工夫: お気に入りのデザインのキッチンツールを立てて置いたり、使いやすい位置に並べたりするのも立派な「配置」です。また、小さなハーブの鉢植えや、カラフルなマグカップなどを視界に入る場所に配置すると、家事の合間に心が和みます。使いやすさと心地よさを両立させることが大切です。
4. 廊下や通路の小さなニッチ：通り過ぎる瞬間に心明るく
廊下や通路は、通り過ぎるだけの場所と思われがちですが、ここに小さな工夫があると、家の中を移動するたびに心が少し明るくなります。
- 色の工夫: 白い壁の多い廊下なら、ニッチの内側やそこに置く小物の色でアクセントをつけてみましょう。淡いピンクや水色など、お好みの明るい色を選ぶと、通りかかるたびに心が弾みます。
- 配置の工夫: 小さなアート作品や、旅行先で見つけた思い出の品などを飾るのがおすすめです。立ち止まってじっくり見る場所ではないからこそ、一瞬でも視覚的にポジティブな印象を与えられるものを配置すると良いでしょう。
5. 寝室のサイドテーブルや小さな棚：安眠と安心感を誘う空間に
寝室は一日の疲れを癒やす大切な場所です。枕元や近くの棚を心地よく整えることで、より深いリラックスを得られるかもしれません。
- 色の工夫: 安眠を誘うとされるのは、青や緑、ラベンダーなど、落ち着きのある色です。サイドテーブルに敷く布や、置く物の色をこれらのトーンで揃えてみましょう。
- 配置の工夫: アロマディフューザーや、優しい光の間接照明（小さなテーブルランプなど）、読書用の本、メガネなど、眠りにつく前に使うものを機能的に配置しつつ、視界に入る場所にリラックスできる色や形のものを選んで置きます。目覚めた時に最初に目に入る場所に、心が穏やかになるものを置くのも良い方法です。
模様替えへの抵抗感を乗り越えるヒント
ご紹介したアイデアは、どれも既存のスペースを活かした、比較的手軽なものです。壁の色を一面だけ変える場合でも、今は壁に貼ってはがせるタイプの壁紙や、小さな面積用の塗料なども豊富にあります。まずは、クッションカバーの色を変えてみたり、お気に入りの小物を一つ置いてみたりするところから始めてみてはいかがでしょうか。
もしお孫さんが遊びに来る機会があれば、リビングの棚の一角に、お孫さんが描いた絵や工作を飾るスペースを作るのも素敵なアイデアです。家族みんなにとっての「心地よい場所」を、小さな工夫から育んでいくことができます。
まとめ
家の中の大きな空間だけでなく、ニッチや棚のような小さな場所にも心を向けてみることで、毎日の暮らしに新たな心地よさや安らぎを見つけることができます。空間心理の考え方をヒントに、お好みの色を取り入れたり、眺めていてホッとする小物を配置したりするだけで、心の状態は少しずつポジティブに変わっていく可能性があります。
大掛かりな模様替えは難しくても、こうした小さな「自分だけの安らぎ空間」は、気軽に始められます。ぜひ、ご自宅の中で気になる小さな場所から、心地よい変化を取り入れてみてください。きっと、日々の暮らしがもっと豊かに感じられることでしょう。