クローゼットや押し入れも心地よく。空間心理で叶える手軽な収納術
見えない場所も、実は心に影響しています
お子様が独立されて、ご夫婦お二人での暮らしが中心になられた方もいらっしゃるかと思います。生活スタイルが変わると、お家の中のモノとの向き合い方も少しずつ変化しますね。長年暮らしていると、ついついモノが増えてしまい、特にクローゼットや押し入れといった収納スペースは、知らず知らずのうちにモノで溢れてしまうことも少なくありません。
こうした「見えない場所だから」とつい後回しにしてしまいがちな場所も、実は私たちの心の状態と深く繋がっていることをご存知でしょうか。空間心理学では、お家の中のあらゆる場所が、住む人の心に影響を与えると考えられています。片付いていない収納スペースを見ると、たとえ扉を閉めていても、心のどこかで「どうにかしないと」というプレッシャーを感じてしまい、それが小さなストレスとなっている可能性があるのです。
この記事では、空間心理の考え方を取り入れながら、クローゼットや押し入れといった収納スペースを心地よく整えるための、手軽で無理のない方法をご紹介します。大掛かりな片付けは大変そう…と感じる方も、きっと「これならできるかも」と思えるアイデアが見つかるはずです。収納スペースを整えることで、お家だけでなく心にもゆとりが生まれることを感じていただけたら嬉しいです。
片付いた収納スペースが心にもたらす良い影響
空間心理の視点から見ると、片付いた収納スペースは私たちの心にいくつかのポジティブな影響を与えてくれます。
まず、心の安心感です。モノがどこにあるか把握できている、すぐに取り出せるという状態は、無意識のうちに私たちに安心感を与えます。逆に、何が入っているかわからない、探すのに時間がかかるという状態は、小さな不安やイライラの原因となります。
次に、決断力の向上です。モノが整理されていると、「今何が必要か」「何を手放すか」といった判断がしやすくなります。これは日常生活における小さな決断の積み重ねであり、こうした「選ぶ」という行為がスムーズに行えることは、他のことへの決断力にも良い影響を与えると言われています。
さらに、ストレスの軽減と心のゆとりです。 cluttered(ごちゃごちゃした)な空間は、視覚的なノイズが多く、脳に余計な情報として負担をかけるという研究もあります。収納スペースの中まで整っていると、視覚的な情報がスッキリし、心が落ち着きやすくなります。探す時間が減ることも、日々の小さなストレスを減らし、時間にゆとりを生み出します。
つまり、収納スペースを整えることは、単にモノをしまうこと以上の、心の健康にも繋がる大切な行為なのです。
手軽に始められる!心地よい収納スペースづくりのアイデア
「よし、片付けよう!」と思っても、収納スペース全体を一度に片付けるのは大変ですし、どこから手をつけていいか迷ってしまうこともありますね。ここでは、手軽に始められて、心の負担にならないような工夫をご紹介します。
1. 「全部出す」より「一角から」始める
片付けの本などで「まず全部出しましょう」と書かれていることもありますが、収納スペースが大きいと、全部出すだけで疲れてしまったり、出しっぱなしになってしまったりすることがあります。まずは、引き出し一段、棚の一部分など、ごく狭い範囲から始めてみましょう。その一角だけを集中して片付けることで、短時間で達成感を得られ、「次もやってみよう」という気持ちになりやすいです。
2. モノの「要不要」を考えるヒント
一つ一つのモノに対して「いる」「いらない」を判断するのはエネルギーを使います。「いつか使うかも…」と迷うモノも多いですね。無理に捨てる必要はありません。
- 「今の自分に必要か」 を基準に考えてみる。
- 「最後に使ったのはいつか」 を思い出してみる。1年以上使っていないモノは、今後も使う可能性が低いかもしれません。
- 「迷うモノ」のための一時置きボックス を作る。すぐに判断できないモノは一時的にそこへ入れ、一定期間(例えば3ヶ月や半年)後も見直してみましょう。
- 思い出の品は無理に手放さない。 専用の箱を用意してまとめておくなど、大切にする形で残しましょう。
大切なのは、完璧を目指さないことです。少しずつモノが減り、必要なモノが選びやすくなるだけでも十分な効果があります。
3. 「隠す」と「見せる」の使い分けと色の工夫
収納スペースの中は基本的に「隠す」場所ですが、扉を開けた時に心地よく見えるように工夫することも大切です。
- 頻繁に使うモノ は、出し入れしやすい手前に置いたり、オープンなボックスを使ったりする「見せる収納」を取り入れると便利です。
- あまり使わないモノ は、奥や上の段など「隠す収納」にします。
- 収納ボックスやハンガーの色を数色に絞るだけでも、見た目がスッキリして視覚的な情報が整理されます。淡い色や落ち着いた色を選ぶと、開けた時に心が安らぐ効果も期待できます。
- ボックスに簡単なラベリングをするだけで、どこに何があるか一目で分かり、探すストレスが減ります。
4. 手軽にできる収納グッズの活用
ホームセンターや100円ショップなどには、手軽に使える収納グッズがたくさんあります。
- 突っ張り棒:デッドスペースになりがちな空間を有効活用できます。軽いモノを吊るしたり、棚板代わりにしたり。
- 収納ボックス、ケース:サイズや形を揃えると、見た目がスッキリします。中に仕切りを入れると、さらに細かく分類できます。
- ブックエンド、ファイルボックス:立てて収納したいモノ(バッグ、本、書類など)の整理に役立ちます。
これらのグッズを上手に使うことで、大掛かりな工事をしなくても、収納力をアップさせたり、使い勝手を良くしたりすることができます。
5. 夫婦それぞれのスペースと孫グッズ
ご夫婦お二人で暮らされている場合、お互いのモノを尊重した収納も大切ですね。
- 大まかにスペースを分けるだけでも、管理がしやすくなります。
- 収納方法にお互いの意見を取り入れながら、無理のない範囲で一緒に考えるのも良いでしょう。
- お孫さんが遊びに来る際に使うおもちゃや絵本などは、一時的に置いておけるスペースを設けるか、すぐに取り出せるボックスなどにまとめておくと便利です。これも、お孫さんの訪問という楽しいイベントに向けて、心の準備をする手助けになります。
小さな一歩が、心のゆとりを生み出す
収納スペースの片付けは、つい後回しにしてしまいがちですが、空間心理の視点から見ると、私たちの心と密接に関わっています。すべてを完璧に片付けようと気負う必要はありません。まずは引き出し一つから、ボックス一つから、手軽に始めてみましょう。
片付いた収納スペースは、モノを探す手間を省くだけでなく、心の安心感、ゆとり、そして日々の小さなストレス軽減に繋がります。お家の中の「見えない場所」を少し整えるだけで、驚くほど心が軽やかに、前向きになるのを感じていただけるかもしれません。
無理なく、楽しみながら、ご自身のペースで心地よい収納空間づくりを進めてみてください。それがきっと、日々の暮らしをより豊かに、心地よいものにしてくれるはずです。